序章
Kさん「これでは生きてる意味がないので■なせてください」
Kさん「でもこれじゃ,あんまりだ」
初日
まこと「こんにちは」
Kさん「何です,あなたは!? 誰が呼んだんだ!! …誰でもいい。■してください!! これでは生きていても意味がない」
まこと「意味がある生き方とは,どんな生き方ですか?」
Kさん「体に自由があって,あちこち動き回れて…,あーもう!! そんな話はどうでもいいから!!」
まこと「自由に動けるようになったら,間欠的な仕事はしつつも,人間関係構築を放棄して,自室に籠もり,何の問題意識も持たずにのうのうと過ごすのでは?」
Kさん「そうですけど…何が悪いんですか!!」
まこと「自室に籠もってベッドの上でゴロゴロ寝て過ごすなら,今と大して変わり無い気がするのは棚上げして,『うまく行かなければ■ぬから,それでいい』という発言もあったと聞いてます」
Kさん「こんな社会で努力して,一体何になるんですか!!」
まこと「何がどうなれば,自立できるように努力してたんですか?」
Kさん「それは…」
まこと「また明日来ます」
二日目
まこと「入りますよ」
Kさん「また来た!! 一体何なんです,あなたは!! オレを笑い者にしたいんですか!?」
まこと「会話しに来たんですよ。話しかけてくれたので,少しは目的が達成しているようです」
Kさん「そんなことで喜ばないでください!!」
まこと「昨日の問いは,答えが出ましたか?」
Kさん「まだです…というか,面倒くさいんです。努力が」
まこと「そうですか。では,あなたが努力しなかった理由は『面倒くさいから』です。社会の状態は関係ありません」
Kさん「だから何だって言うんですか!!」
まこと「理由をハッキリさせなければ解決しない,ということです」
Kさん「…」
まこと「全般に,今の状態を選んだのはご自身です」
Kさん「何を言ってるんですか!! 自分は事故に遭って,こんなになってしまったんですよ!!」
まこと「確かにそうですが,『うまく行かなかったので,自■を選んだらこうなった』と考えてください」
Kさん「そんな非現実的なことを!!」
まこと「精神と肉体の繋がり,食べて栄養を吸収して残りを排泄,痛みが伝わる仕組み,脳関門と呼ばれる関所,見る聞く考える話す…,あまりにも機能的です。都合よく出来過ぎていると思いませんか。大地と海と大気があり,太陽は照って,風は吹き,雨も降り,草木は茂って,農作物が育ち,色んな生物がいます。奇跡です。私たちは非現実的な中で生きています」
Kさん「そんな話はどうでもいい!!」
まこと「また明日来ます」
三日目
Kさん「■して,って言ってるでしょ!!」
まこと「あなたが自由だった時に,『わたしを■して』と私があなたにお願いしたら,あなたは実行しますか?」
Kさん「しませんよ。犯罪者になってしまう」
まこと「わたしも同じです」
Kさん「そうだけど…」
まこと「ではこう思ってください。あなた■されたのです」
Kさん「!?」
まこと「望み通り■されて,この世界へ送り込まれ,こうなってます」
Kさん「何も変わってないじゃないですか!!」
まこと「変わってますよ。記憶も書き換えましたので,変わったことがわからないのです」
Kさん「あんたと話していると,頭がおかしくなりそうだ」
まこと「そのままおかしな話を続けましょう。時間を戻してこうなったのです」
Kさん「!!」
まこと「あなたが『時間を戻して』と言うので,わたしが指定された時間へ戻せるように準備して,あなたが実行しました」
Kさん「さっきと同じで何も変わらない!!」
まこと「記憶も書き換えました」
Kさん「あーもう…!!」
まこと「あなたが選んだのです。もしかしたら真っ暗闇世界行きだったかも知れません」
Kさん「その方がずっとましだ!!」
まこと「辺りは真っ暗闇です。腕も足も闇に同化して,自分の体にも触ることもできません。目を開けても閉じても暗闇ですから,まぶたの開閉はどうでもよくなります。大声を出したつもりが声になりません。音も匂いも無く,痛みも空腹もありません。自分に危害を加える存在がいない代わりに,何もありません。ただ真っ暗な空間に,あなたの意識だけがあります」
Kさん「いいですよ。それで」
まこと「いまの悩みも,将来の夢も,過去の出来事も,お金も,異性も,衣食住も,何も気にする必要がなくなります。そして眠ることはできません」
Kさん「それでいいです!!」
まこと「あなたは無限退屈地獄に耐えられません。なぜなら,有限時間ですら,退屈をしのぐ方法を身に付けられないでいるからです。あなたは今ある中で,些細なこと一つ一つに感謝した方がよく,生きることについて真剣に考えた方がいいです。また明日来ます」
四日目
Kさん「あんたは屁理屈大王としか思えない。呆れて怒る気も失せました」
まこと「皆さんは私のことを『屁理屈界の重鎮』呼びます。ところであなたは,仕事の待機時間に,みんなに背を向けて座っていたようですが,なぜ拒絶の意思表示をしていたんですか?」
Kさん「だって誰も話しかけてくれないから」
まこと「相手からすれば,『なんでKさんは話しかけてくれないんだ』なんですよ」
Kさん「そんな勝手な!! みんな小言ばかりで,誰も自分のことを理解してくれないから!!」
まこと「それは相手の言い分にもなるんです」
Kさん「でもみんなの方が年上だから,年下の自分に話しかけるのは当然じゃないですか」
まこと「あなたが 50代になったとき,20代の子に話しかけられるんですか?」
Kさん「それは…」
まこと「…ですよね。その時,20代の子は『なんでKさんは話しかけてくれないんだ。年上なのに』と不満を抱えるようになります。今のあなたのようにです。つまり職場の年上の人達は,自分自身です」
Kさん「『20代ではそれでもいいが,50代になったら通じないぞ。周りは君のことを,外見は大人だが中身は子供と見るようになる』と言われたって,いったい何をどうすればよかったんですか!!」
まこと「自分と向き合うことでした」
Kさん「自分と向き合って何になるんです!? 何も変わらないでしょ!! まず周りが理解を示してくれないと!!」
まこと「周りも同じことを思っています。周りはあなた自身なんですから,あなたが周りへ向ける不満は,自分へ向ける不満と同じで,不満があるなら,不満を解消するために内面を見つめるしかなかった。無理なら他の人に手伝ってもらう。自身の問題を解決するのは本人以外にいませんから,問題には真摯に向き合うしかありません。また来ます」
五日目
まこと「あなたは結論を早く出し過ぎました」
Kさん「自分は事故に遭って…」
まこと「『事故』なんですね」
まこと「『■ねば楽になれる』は思い込みです。■んで楽になれる保証はどこにもなく,苦しむかも知れないんですから」
Kさん「苦しむとは限らないんですから,楽になると思ったっていいじゃないですか」
まこと「あなたは■んで楽になれる証明をしてません。楽な世界へ行けるはずが,苦しい世界へ送られるかも知れませんよ」
Kさん「どっちかわからないんですから,楽な世界へ行けると思って何が悪いんですか」
まこと「『この社会で生きるのは辛いだけ』と悲観的で,かつ『■んだら楽になれる』と楽観的に捉えているようですが,楽観的なら『人生つまづいても何とかなる』,悲観的なら『自■を選んだら苦しい世界へ送られる』と捉えないのはなぜですか?」
Kさん「そうですけど…,逃げ出したい気持ちを察してください。この社会は地獄です」
まこと「気持ちを理解しても,逃げた先もまた地獄だったらどうするんです?」
Kさん「そこまで考えません」
まこと「動画をよく観ていたと聞きましたが,なんで仮想体験を活かそうとしなかったんですか?こうするとあ~なる,あーするとこ~なる。いい教訓になるじゃないですか」
Kさん「仮想体験とは思ってません。楽しいから観てただけです。そこまで考えません」
まこと「みんなに背を向けてインターネット記事ばかり読んでいたようですが,どんな目的を達成するために記事を読んでたんですか? 情報を吸収して,役立てようとしてたわけでしょ」
Kさん「読んでただけです。みんなもニュースを観るでしょ。同じです。何かの役に立てようなんて,そこまで考えません」
まこと「わたしは直接触りますけど,電車の手すりは服の袖越しに触っていたという話は本当ですか?」
Kさん「そうです。だって,つり革も手すりも汚いじゃないですか」
まこと「服の袖が汚れることは気にならないんですか?手すりの汚れが付いた服を着ることになりますけど」
Kさん「…!!」
まこと「着替えは家に帰ってからですよね。ず~と,手すりの手垢・ベトベトが付いた服を着たままです。キタナ~い」
Kさん「そっ,そこまで考えません」
まこと「『この仕事が無くなったらどうする?』という話が職場で出たことがあったようですね」
Kさん「自分は清掃の仕事をしようと思ってました」
まこと「あなたにとって,掃除道具は汚いんじゃありませんか?」
Kさん「手袋をするつもりだったので,気にしなかったです」
まこと「手袋が清掃によって汚れていくことについては?」
Kさん「後で手を洗うからいいんです」
まこと「だったら,素手で掃除道具を掴んでもいいんじゃないんですか?手すりも。後で手を洗えばいいんですから」
Kさん「そうですけど…,そこまで考えません」
まこと「…。また来ます」
最終章
Kさん「昨日は疲れた顔をして帰って行きましたが,どうかしましたか?」
まこと「動揺が…。いや,もう時間が無いので本題に入ります。今の状態はあなたにとって必要だから到来したのです。生きることについて真剣に考えてください」
Kさん「でも,答えが出せても…」
まこと「人は明日,交通事故に遭って■んでしまうかも知れませんし,■ななくても,入院するかも知れません。回復して,退院したと思ったら,再び交通事故に遭うかも知れません。生涯健康に過ごしても,いつかは寿命で■にます。では,なぜ人は生きるのでしょう」
Kさん「なんで,自■を選んじゃいけないんですか?」
まこと「生きる理由を知ることです。正しい答えを出せたとき,自■を選んではいけない正しい理由と,
もわかります。みんなが思っている『理由』は理由になりませんので,すべて間違いです。…ところで,話し相手がいるって素晴らしいと思いませんか?ご家族も健在ですし」
Kさん「?」
まこと「その中に,答えがあるかも知れません。機会があれば,また会いしましょう」
Kさん「ちょっと待ってください!教えてくれないんですか!?」
まこと「人は『生きる理由』の答えを出すために生まれて来ます。教えてもらうためではありません。正しい答えを出せたら,『生きる目的』を達成したので,死んでは生まれる繰り返しの輪から外れ,二度と生まれて来なくなります
生きる理由は一つです。生きる理由は人の数だけあるは,間違いです。それでは」
おしまい